乳の願い  1924(大正13)年 第5回帝展 絹本着色 1面 187.5×338.5cm
 大きな牛を前に女性が掌を合せる。やがて生れ来る我子のために豊かな母乳が授かるように・・。現代でもインドにおいては牛を神聖なものとして捉えることはよく知られるが、出産、生育等の象徴としての雌牛を神聖視する古くからの風習をテーマに描かれた宗教画である。大きく簡潔な構図の取り方が神聖で静謐な宗教的場面を力強く伝えている。
 祈願する女性は中東の風俗を思わせるが、その衣装の赤い色は美しく厳かである。一方、画面の4分の3を占めようかという巨大な牛には、祈りの象徴として朱の手型(描いたのではなく、実際の女性の右掌を転写した)を配し、画面が単調になることを防いでいる。しかし、一見ただの大きな白い面に見える牛の躯には実に細かな毛描きが施されており、作者の卓越した技量が窺い知れる。

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