故父  1924(大正13)年 第5回帝展 絹本着色 1面 92.0×62.0cm
 印象の父、堂本伍兵衛は、京都に代々続く造酒屋「丹波屋」を営む一方、近隣の富岡鉄斎を始めとする芸術家たちとの親交もあり、歌、俳句、茶、花、書画骨董への造詣深い人であったが、印象が20歳の頃に亡くなっている。そんな父の在りし日の姿が追憶されている。
 洋風の欄干がついたベランダ?で蝙蝠を差して立つ父。イタチ類の襟巻や手袋、地球儀や置時計など、どことなく大袈裟なそれらの道具立が精密に描かれ、写真館でのポーズを想わせるようで興味深く、故人のハイカラな生活ぶりがよく窺える。欄干の向こうには庭や蔵らしき建物のたたずまいがうっすらと平板に描かれる。父を中央に配した素朴な画面はその人となりを強調するのに役立っているが、西欧のナイーヴ派の画家アンリ・ルソーを思わせる同種のナイーヴな表現は、この期の作品『坂』にも通ずる。

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