坂  1924(大正13)年 第1回青甲社展 絹本着色 1面 120.0×72.0cm
 画面中央に坂が大きく配され、左に空地と寺の石垣が続き、右には民家が並ぶ。中空から望遠レンズによって俯瞰したような、風景の圧縮された遠近感が作品に素朴で戯画的なイメージを与えている。
 坂には和装と洋装の人々が行き交い、自転車、人力車、電柱など、まさに大正という時代を表す風俗が描き込まれている。これらに加え、遠景に描かれた気球や洋館など、作品内にちりばめられた不思議な和洋折衷は見るものを退屈させることがない。日本画でありながら、左手前の樹に配されたカルテリーノもそんな作者の遊び心を伝えているようである。
 作中の“坂”は五条坂をモティーフにしたものであるともいわれているが、寺や家、そして坂がこの配置どおりとなった風景は実存しないようである。作者一流の構想画的な要素が多分に加味された風景画と見ることが出来よう。  西山翠嶂画塾青甲社の第1回展出品作。

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