木華開耶媛  1929(昭和4)年 第10回帝展   絹本着色 2曲1隻 170.0×238.0cm
 木華開耶媛(木花之開耶姫・木花之佐久夜毘売)は日本神話に登場する女神。山を司る大山祇神の娘で、天照大神の孫である邇邇芸命の妻となった。
 儚い美を謳う桜の花に擬った媛の姿をあたかも花の精のように描いた様は、あのボッティチェリの『ビーナスの誕生』を想い起させる。現世的な顔つきでほんのりと紅を潮した頬や目元、服装、手足のしなやかさがおおらかなエロティシズムを放ちつつも、静かな眼差やその様の屈託のなさは却って神々しい近寄り難さをも醸し出している。
 数々の印象作品の中でも特に有名で人気の高い作品である。春満開を示す桜の木の下で野に座る美しい女神の姿という、日本人の心の琴線に触れる要素を完備した図を考えれば、なるほどうなずけることではある。

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