観世音(六観音) 1937(昭和12)年 第1回新文展 絹本着色 1面 185.0×140.0cm
 観音は観世音菩薩の略であり、その慈悲をもって衆生を済度することを本願とする。衆生の求めに応じて、多くの変化観音として姿を変え、苦難から救うという。六観音は六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)を彷徨う衆生を救済する六種類の観音である。
 ここでは台密の様式に則り、中央右寄りに大きく如意輪観音を、周囲には右上部より、不空羂索観音、十一面観音、馬頭観音、千手観音、聖観音の六観音を配し、左下には二人の天女を立たせた。天上の各菩薩はあっさりと白描風に描かれ、清楚で穏やかな上品さが漂う。一方、画面最下部では下界の衆生が様々な災難に苛まれる様が示されるが、こちらは豊かな色彩で、平安朝以後の六道絵を思わせる大和絵風の表現による。それぞれ異なった描法により聖俗の世界を対比させているのであろう。観音を念じれば、衆生はこれらの迷界から救われるという観音経の教えを、印象は独自の画面構成により絵解きした新感覚の仏画に仕上げている。

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