或る家族 1949(昭和24)年 第5回日展 紙本着色 1面 120.0×164.0cm
 印象はこの作品について「京都郊外のある知人の家族をモデルにし、それぞれ年代の違った女性のあり方を構成してみた」そして「戦後の思想の最も動揺した時代の親と子の姿を描いてみた」と語っている。つまりこの作品の主題はその風俗描写よりも戦前の人生観=右の母と、戦後の人生観=左の娘が攻めぎ合う当時の社会描写にある。
 簡略化され多少デフォルメされた形状で表される人や物。肌、白、黒、緑の少しくすんだ色調で統一される画面。卓を囲んで母とその娘たちが集う。生活感溢れる農婦姿の母は収穫の終ったピーマンのへたを取り、当世風ファッションに身を包む娘はトランプ占いに興じる。衣装の示す母と娘の対照的な様相は、貧富の入り交じった様を示す他の事物と同じく、実にアンバランスであり、世代や価値観の対立を感じさせる。二人の間に挟まれた格好の妹達は、視線をただ虚にうろうろさせており、いかにも存在感が薄い。数々の矛盾を孕んだ風潮の中に成す術もなく身を任せるしかない戦後風俗を象徴しているのであろうか。何よりもこの団欒には感情を伝え合う視線の連携がない。激動の時代の狭間で従来の絆を失い、脆くも崩壊の危機を孕んだ“或る家族”の断章として、造形的に主題を扱いながら印象の厳しいニヒルな眼が光る。

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