生活 1955(昭和30)年 第11回日展 紙本着色 1面
 矩形の色面のみによる幾何学的構成であるが、よく見ると黒く配されているのが集合住宅の窓であることが分る。つまり、その中で営まれる人々の暮らしを暗示する画題の『生活』というわけである。
 しかし、これら窓の前後には文学性や説明性は見られない。鮮かな色の建物壁面と窓の黒により近代生活における明暗を読むことも出来るだろうが、印象の関心はむしろベン・ニコルソンやピエト・モンドリアン風の色面処理にあると見るべきだろう。四箇所ほどに貼り付けられた厚紙、清潔な発色、砂目など、日本画材のマチエールとしての問題に対峙する姿勢も窺える。辛うじて対象を持ちながら、極限までに整理された画面から は今後印象の進む方向性が看取出来る。

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