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京都府立堂本印象美術館開館60周年にあたって
-美術館建設のむつかしさ-

京都府立堂本印象美術館は2026年10月22日に開館60周年を迎えます。

当館は、堂本印象が自身の作品の散逸を防ぎ、作品を保存するために自らの構想と力で建設した美術館です。

美術館の建設には用地、建物、作品を収蔵する場所があること、それを陳列することができること。そして建設後に美術館を維持していく経費があること、これらに必要な莫大な資金があることなど条件がとても厳しく、計画すら成りたたないくらいむつかしさがあります。そして意外にもむつかしいのが若い時からの作品が手元に残っていることです。作家が社会生活をしている以上、作品が手元から離れていくのは仕方のないことではありますが、これを手元に残しておくには強い意志と、余裕の経済力がなければできません。

印象には次のような例もあります。34歳の時の帝展出品作品「華厳」は第1回美術院賞を受賞しました。それから随分後、1952年(昭和27年)、東大寺で大仏開眼1200年を記念して大仏奉賛会が設立されました。翌年に奉賛会の会長をしていた朝日新聞社会長に請われ、「華厳」奉賛会の記念事業として東大寺に奉納されました。制作から27年後に手元から離れた珍しい例となりました。若い時からの作品は、京都市立絵画専門学校2年生の時、第1回帝展に出品し、初出品初入選となった「深草」からほとんどの作品は手元に残しており、美術館建設に必要な用地は、母屋のとなりの土地を先の大戦前の昭和10年代に確保していました。

印象は1952年(昭和27年)に念願であったヨーロッパへ半年間出かけました。その間、目にした宮殿や美術館、邸宅を改造した個人美術館などから美術館構想が固まってきました。敷地のうしろにやさしい曲線の衣笠山があり、それに呼応するように、白い船をおもわせる独創的な外観、外壁に抽象のレリーフを施し、館内の装飾についても印象がすべてデザインし、美術館全体が印象の作品となりました。そして作家自身が生存中に自身の手で建設した美術館となりました。

京都府立堂本印象美術館 館長 三輪晃久